◆ モモせん孔細菌病 ◆
 本病はモモにとって最も重要な病害の一つに位置づけられながら、細菌病であるために有効な殺菌剤の選択肢は極めて少なく決定的な薬剤による防除法はない。そのため、本病防除において薬剤のみに頼るような考えで栽培することは困難と考えるべきであり、モモの栽培に当たっては耕種的対策と薬剤散布を必ずセットにすることが必須である。
 防除に利用される薬剤は大きく無機銅剤と抗生物質剤に分けられる。まず、4-12式ボルドー液、ICボルドー412 30倍のほか無機銅剤を含む製剤であるムッシュボルドーDF500倍、コサイド3000 1,000倍またはキンセット水和剤80 1,000倍は開花直前までに使用し、キンセット水和剤80を除いた他の剤は秋期防除剤として9月以降の晩生種収穫後〜落葉期に約2週間間隔で2〜3回散布する。病原細菌の感染は台風などによる風雨によって生じた傷い部や落葉痕からの侵入によるもので感染タイミングはほぼ1〜2日であり、これ以前に農薬散布がなされていることが重要である。
 また生育期間はアグレプト水和剤1,000倍やマイコシールド2,000倍により予防散布を行うが、アグレプト水和剤は収穫前の使用時期の制限が60日前と厳しく、薬剤耐性菌出現リスクが高いので使用に当たっては注意が必要である。最近(2019年9月)になって農薬登録を取得したクプロシールド1,000倍は無機銅剤であるがクレフノン100倍を加用することにより無機銅剤特有の薬害が軽減され、落花後〜6月上旬頃までの使用が可能であるが、クプロシールドとクレフノンの薬液混合に当たっては十分攪拌しないと無機銅剤特有の薬害を生じる。